神様【鶴清】【#つるきよ版深夜の60分一本勝負】

つるきよ版深夜の60分一本勝負
#つるきよ版深夜の60分一本勝負
お題:告白

つるきよ版深夜の60分一本勝負

神様、どうか聞いて下さい。
神様、俺の罪を告白します。
だから、どうか、どうか。

突然の出来事だった。
負傷者もなく敵本陣を叩き後は帰還するだけと相成った時だ。
今回出陣部隊の隊長を務めていた鶴丸国永を時間遡行軍の放つようなおどろおどろしい燐光が包み込んだ。
いや、それは鶴丸自身から吹き出しているようであった。
何事かと動揺する部隊にあっていっそ当人である鶴丸が一番に冷静だった。
それは或いは意外と体面にこだわる彼の矜持がそうさせたのかもしれない。
腰に佩いた太刀を部隊にいた御神刀石切丸に投げ渡し、彼の大太刀が逡巡するのに「封印を」とねじ伏せる。
そうして部隊員たちに笑顔を向け「すまん、世話を掛けるが連れて帰ってもらえると嬉しい」と宣った。
その捨て置くことを良しとするような台詞に部隊員の大半は憤ったが、鶴丸の隣りにいた三日月宗近が「承知仕った」と一言だけ言ったので口を噤んだ。
かくして顕現こそ解けなかったものの意識の無くなった鶴丸の体を三日月宗近が、本体である刀を石切丸が本丸に持ち帰ってきたのである。

さてこの鶴丸国永には恋仲の刀がいる。
それが幕末の志士、天才剣士と謳われた沖田総司の刀、加州清光である。
加州清光は部隊が帰還した後、鶴丸の部屋を訪ねてそこにいた三日月と石切丸、主である審神者から事の顛末を聞いた。
曰くに穢れを溜め込みすぎたための事であるという。
鶴丸には死穢がある。
主の副葬品として墓に納められていた彼は黄泉との繋がりが強いのだという。
それだけならばどうということはないが、戦に参加し、穢の強い遡行軍と切り結ぶには少々厄介があったようで。
神と約を結び定期的に穢れ祓いを行っていたそうだ。
石切丸はぼかしたが、三日月ははっきり「神と目合う」と口にした。

真面目で誠実な鶴丸は清光と恋仲になって以降穢れ祓いを行っていなかったのではないか。
そう思い清光は顔を青くした。
石切丸が肩に手を置き、「仮にそうだとしても、それは鶴丸さんが選んだことだよ。君が気に病む必要はない」と言った。
暖かな掌に清光は呼吸が戻るのを感じた。
三日月も「鶴丸も意外と要領が悪いなあ」などとのんびりと言うものだから、あまり深刻な事態ではないように思えてきた。
もしかしたら刀の付喪神を励起した審神者ならなんとかできるのではないだろうか。
そう思い審神者に目を向ける清光にしかし審神者は申し訳無さそうな顔をした。
話し難そうな審神者に代わり石切丸が再び口を開いた。
「鶴丸さんの封印は、穢れが祓われない限り解けない。けれど約を破ってしまった今の状態では穢れ祓いを行うこともできないんだ」
再び清光は顔色を無くす。
それでは。鶴丸は。
「本丸に居れば少しずつではあっても穢れは祓われていくよ。ここの空気は清浄だからね」
だからどうかそう気を落とさないで。

皆が退室し鶴丸と二人きりとなった室内で、清光はどこにいるとも知れぬ神に懺悔した。
神様、どうか聞いて下さい。
神様、俺の罪を告白します。
天上におわすにふさわしい彼の鳥を、飛び立てぬようおよそ考えつくあらゆる卑劣な手段を用い地へと繋ぎ留めているのは俺なのです。
神様、どうか聞いて下さい。
罰なら俺が如何様にも受けますからどうか、あの人に罪をみとめないで下さい。
彼の鳥が約を果たさず地にいるのは俺のせいなのです。
神様、どうかあの自由の人から自由を、翼を奪わないでください。
神様、どうか、どうか。

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