綺麗、は嬉しい、らしい【みかきよ】【#みかきよ深夜の一本勝負お題作品】

みかきよ版深夜の真剣60分一本勝負さま
#みかきよ深夜の一本勝負お題作品
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みかきよ深夜の一本勝負お題作品

ひらり、ひらり。
桜が舞っている。
綺麗だなあ、と加州清光は思った。
心がそわそわとした。
決して嫌な感じではなく、期待に胸が膨らむような、胸のうちが温まるようなものだ。
嬉しい、と思った
綺麗、は嬉しい、に繋がるのだ。
桜の花びらに閉ざされていた視界が開けると、それよりももっと綺麗なものが清光を出迎えた。
「三日月宗近だ。打ち除けが多い故、三日月と呼ばれる。よろしくたのむ」
清光はもっともっと嬉しくなって弾けるように笑って自己紹介した。
「川の下の子です。加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね」
すると藍色の佳人は目をまあるくしてから、同じように嬉しそうに破顔したものだから、清光はまた嬉しくなった。

「ここが、おぬしの部屋だな」
何かわからないことはないか?
優しく問われた清光は、ないでーす。と返事をした。
佳人、こと、本日近侍の三日月宗近はやってきたばかりの二振目の加州清光に本丸を案内していた。
一通り案内し、覚えることが多いが覚えきれただろうか、と問えば大丈夫と応えがあった。
「なんと。清光は覚えがよいのだな。俺は顕現してすぐは何度も迷子になったぞ」
「あー、確かにここ、広いもんね。でも三日月の説明分かりやすかったから大丈夫」
きっと何度も迷子になった賜物だね、と清光は笑った。
邪気の無い笑顔に三日月は目を細める。
よく笑う子だ。
一振目の、初期刀の加州清光も決して笑わないわけではないが、こんなにも無邪気にずっと笑っているような刀でもない。
三日月は政府から各本丸に配布された刀だ。
初期刀の加州清光、初鍛刀の乱藤四郎につぐ本丸の古参で、一緒に配布された小狐丸と四振で本丸を支えてきた。 名だたる刀剣達を多数顕現し、安定した運営ができるようになってきた今でも、黎明期を共に乗り切った四振の絆は固いし、本丸中から頼りにされていた。
その中でも初期刀の加州清光は特に皆に慕われ、頼りにされている。
初期には弱気になることもあったが、荒波を乗り越えることで肉体的にだけではなく精神的にも強くなったのだろう。
常に凛と背筋を伸ばす姿は頼もしいものだ。
それに比べてしまうと、顕現したての加州清光は随分と幼気で可愛らしかった。
「そう言ってもらえるなら、俺が迷子になっていたのも無駄ではなかったな」
加州にはよく怒られたが、と三日月が言うと清光は小首を傾げた。
「一振目の俺?初期刀なんだっけ。加州って呼んでるんだね」
「ああ、紛らわしいのでおぬしの事は『清光』と呼ばせてもらっているが…嫌だっただろうか」
この本丸では二振目の刀を迎えるのは初めてだったので、すべてが手探りだ。
心配になって問えば、ううん、と清光は首を振った。
「ただ、後から来た俺の方が親しそうな呼び名だなって思っただけ」
なるほど、と三日月は思った。
確かに『清光』という呼び方を使うのは大和守安定を始めとする縁の深いもの達がほとんどだ。
それを、刀としては接点のなかった自分が使う、ということを三日月は楽しく感じた。
その楽しいという心のままに、言葉を紡ぐ。
「ならばこれからそれだけ親しくなろう。困ったことがあれば何でも言ってくれ。困っていなくても訪ねてきてよいぞ。俺も清光を訪ねよう」
改めてこれからよろしくたのむ、と手を差し出せば清光は面食らったように目を瞬かせた後嬉しそうに笑った。
「うん!これからよろしく!」

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